人工股関節置換術(Total hip arthroplasty:THA)
股関節のつくり
股関節は脚の付け根にある関節で、骨盤と大腿骨のつなぎ目です。丸いお椀のような形をした骨盤側の関節面にあたる寛骨臼(かんこつきゅう)に丸いボールのような形をした大腿骨側の関節面にあたる大腿骨頭(だいたいこっとう)がはまり込んでできている関節なので、股関節はさまざまな方向に動かすことができます。
また、正常な関節では寛骨臼、大腿骨頭の表面にクッションの役割をしている軟骨が存在しています。
また、正常な関節では寛骨臼、大腿骨頭の表面にクッションの役割をしている軟骨が存在しています。

左股関節のレントゲン(正常)
THAが必要な方
変形性股関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死、大腿骨頸部骨折などの股関節の疾患により痛みが強く日常生活に支障がある方の中で、関節の破壊が強く自身の骨を使っての手術が難しいと判断される方がTHAの対象となります。
変形性股関節症
何らかの原因で寛骨臼、大腿骨頭の表面の軟骨がすり減り、さらに寛骨臼、大腿骨頭が変形する疾患です。
日本人では「寛骨臼形成不全」と言って、生まれつき、もしくは成長期に大腿骨頭に対する寛骨臼の覆う部分の成長が悪く、体重がかかる面積が小さくなることで軟骨の負荷が大きくなり、軟骨のすり減りが起きやすい状態から変形性股関節症になることが多いですが、最近では食生活の欧米化などによる体の大きさや体重の増加によって起こる、明らかな原因のない変形性股関節症も増えています。
日本人では「寛骨臼形成不全」と言って、生まれつき、もしくは成長期に大腿骨頭に対する寛骨臼の覆う部分の成長が悪く、体重がかかる面積が小さくなることで軟骨の負荷が大きくなり、軟骨のすり減りが起きやすい状態から変形性股関節症になることが多いですが、最近では食生活の欧米化などによる体の大きさや体重の増加によって起こる、明らかな原因のない変形性股関節症も増えています。
関節リウマチ
本来は細菌やウィルスなどから自分の体を守るはずの免疫機能に異常が生じ、自分の体の一部である関節を破壊することで痛みや腫れが生じる疾患です。さまざまな関節に生じ、全身的には薬物療法が有効ですが、関節の破壊が強く、痛みがある関節に対しては人工関節手術が適応になります。
大腿骨頭壊死
大腿骨頭への血流が途絶えると大腿骨頭が壊死します。そこに体重がかかると壊死した大腿骨頭が潰れてしまい股関節に痛みが生じる疾患です。さらに進行すると変形性股関節症に繋がります。何らかの病気の治療に使用したステロイドという薬物が原因となることが多いですが、これに加え大量の飲酒などアルコール摂取が関与するものや、全く原因が不明なものを合わせて特発性大腿骨頭壊死と言います。一方、大腿骨頸部骨折や放射線照射、手術後など原因がはっきりしているものを症候性大腿骨頭壊死と言います。
大腿骨頸部骨折
高齢者や骨粗鬆症の方が転んだ場合に骨折しやすい部位の一つが大腿骨頸部です。大腿骨頸部は大腿骨頭の下のくびれた部分です。大腿骨頸部で骨折した場合、大腿骨頭への血流が途絶える場合があるため、骨折の程度、患者さんの状態によってはTHAが適応になる場合があります。
THAの実際
THAは、痛みの原因となっているご自身の寛骨臼と大腿骨頭をインプラントと呼ばれる人工物に交換することで痛みのない関節を再建する手術です。実際には、傷んだご自身の寛骨臼を丸く削り直し、“カップ”と呼ばれる半球状のインプラントを設置します。そして、その中に実際に寛骨臼側の新しい関節面になる“ライナー”を設置します。
一方、大腿骨側は、傷んだ骨頭を切除し、大腿骨の中に“ステム”と呼ばれるインプラントを挿入し、その上に新しい大腿骨側の関節面になる“ヘッド”を設置します。ヘッドをライナーの中に戻す(整復する)ことで痛みの原因となっていたご自身の臼蓋と大腿骨頭が、人工物であるライナーとヘッドに変わるので痛みがなくなる仕組みになっています。
当センターでは、手術時間は1時間程度で、術翌日よりリハビリを開始し、術後2週間で平地歩行と階段昇降ができる状態で退院することを目標としています。
一方、大腿骨側は、傷んだ骨頭を切除し、大腿骨の中に“ステム”と呼ばれるインプラントを挿入し、その上に新しい大腿骨側の関節面になる“ヘッド”を設置します。ヘッドをライナーの中に戻す(整復する)ことで痛みの原因となっていたご自身の臼蓋と大腿骨頭が、人工物であるライナーとヘッドに変わるので痛みがなくなる仕組みになっています。
当センターでは、手術時間は1時間程度で、術翌日よりリハビリを開始し、術後2週間で平地歩行と階段昇降ができる状態で退院することを目標としています。

左骨盤の模型。丸く削り直した寛骨臼(左)にカップ(右の灰色の部分)を設置する。なお、この模型ではカップの中にすでにライナー(クリーム色の部分)が設置されています。

左大腿骨の模型。ステム(左)を骨頭を切除した大腿骨(右)に挿入する。なお、この模型ではステムにヘッド(ピンク色の部分)が設置されています。

それぞれのインプラントを骨の中に設置し、ヘッドをライナーの中に入れて整復した状態。これが完成した状態になります。
THAのメリット(=目的)
THAの主なメリットは、
また、関節の動き(可動域)も手術前と比較すると良くなることが多いです。しかし、元々関節が固い方はTHA後も関節の固さが残るケースもあります。
- 痛みがなくなること
- 支持脚ができること
- 関節の動き(可動域)が良くなること
また、関節の動き(可動域)も手術前と比較すると良くなることが多いです。しかし、元々関節が固い方はTHA後も関節の固さが残るケースもあります。
THAのデメリット(=合併症)
THAの主な合併症としては、出血、感染、深部静脈血栓症・肺塞栓症、神経麻痺、脱臼、インプラントの耐用年数が挙げられます。
出血
平均的に約100~300ml出血します。THAを受ける患者さんの多くが待機的に手術するので、当院では入院までにご自身の血液を400ml輸血用に採っておく(貯血といいます)ことが多いです。それにより、なるべく他の人からいただく輸血を避けるようにしています。
感染
手術直後に手術創部(皮膚を切ったところ)から感染する早期の感染と創部が治った後に感染する晩期の感染があります。早期の感染は、まさに手術創部から細菌が侵入するものなので手術創部が治ってしまえば細菌が侵入することはありません。しかし、手術創部が治った後も、ご自身の体のどこかに細菌が感染した場合にその細菌が血液の流れに乗って手術した関節に感染することがあります。これを晩期の感染と言います。
晩期の感染の原因の中には虫歯や歯槽膿漏といった口腔内の細菌が関連する病気や足の指にできることの多い水虫などがあります。しかし、これらはご自身で気を付けていただければ予防できるものでもありますので、手術を受ける時だけでなく手術を受けた後も気を付けていただく必要があります。
一般的に感染の発生率は0.5~3%程度と言われており、感染した場合はインプラントを抜去しなければならない場合や長期にわたって抗生剤を使用しなければならないこともあるので、まずは十分に感染予防をしていくことが大切です。
晩期の感染の原因の中には虫歯や歯槽膿漏といった口腔内の細菌が関連する病気や足の指にできることの多い水虫などがあります。しかし、これらはご自身で気を付けていただければ予防できるものでもありますので、手術を受ける時だけでなく手術を受けた後も気を付けていただく必要があります。
一般的に感染の発生率は0.5~3%程度と言われており、感染した場合はインプラントを抜去しなければならない場合や長期にわたって抗生剤を使用しなければならないこともあるので、まずは十分に感染予防をしていくことが大切です。
深部静脈血栓症・肺塞栓症
深部静脈血栓症・肺塞栓症は一般的に「エコノミークラス症候群」と同じ意味の言葉です。手術後に両脚をあまり動かさないでいると血液の流れが悪くなり、ふくらはぎの静脈に血栓(血のかたまり)が生じる深部静脈血栓症が起こる場合があります。この血栓が血管の中を通って肺動脈に詰まる場合があり、これは肺塞栓症と言われ、呼吸が苦しくなったり、息切れしたり、場合によっては生命に関わることもあります。このような症状を伴う肺塞栓症の発生率は約0.7%といわれています。
これらを予防するため、術後に弾性ストッキングを履いたり、ふくらはぎを自動的にマッサージする器械を用いたり、早期に脚の運動を開始するなどの方法がとられますが、なるべく早く元通りの生活に近づけるのが最良の予防になるので、手術翌日からリハビリを始めることはリハビリのためだけでなく、血栓症の予防にも繋がります。
これらを予防するため、術後に弾性ストッキングを履いたり、ふくらはぎを自動的にマッサージする器械を用いたり、早期に脚の運動を開始するなどの方法がとられますが、なるべく早く元通りの生活に近づけるのが最良の予防になるので、手術翌日からリハビリを始めることはリハビリのためだけでなく、血栓症の予防にも繋がります。
神経麻痺
人工股関節置換術後に神経麻痺を起こすことが稀にあります。通常、人工股関節置換術を行なっている術野には神経は見えないのですが、術野を見やすくするために使う手術器具が神経を刺激することで神経麻痺が生じることがあります。
神経麻痺を起こすと脚の一部に痛みやしびれを感じたり、力が入らなくなったりして歩行に障害が生じます。多くの場合、徐々に回復し1年程度で正常に近い状態に戻るとされていますが、何らかの形で障害が残る場合もあります。
神経麻痺を起こすと脚の一部に痛みやしびれを感じたり、力が入らなくなったりして歩行に障害が生じます。多くの場合、徐々に回復し1年程度で正常に近い状態に戻るとされていますが、何らかの形で障害が残る場合もあります。
脱臼
大腿骨側のインプラントであるヘッドが寛骨臼側のインプラントであるライナーから外れる状態を脱臼と言います。多くの場合、人工股関節置換術後に日常生活を普通に送ってもらう範囲で脱臼を起こすことは非常に少ないと言えます。しかし、当センターでは入院中に人工股関節がどのような姿勢をしたら脱臼するかということを覚えてもらうことで術後の日常生活においてより安全に安心して生活していただけるようにしています。
また、転ぶと骨折することがあるだけでなく、脱臼することもあるので転ばないように生活していただくことも大切と考えています。なお脱臼した場合、強い痛みを伴い、ご自身で脱臼を整復することはできません。病院に連絡し、来ていただいた上で麻酔をかければもう一度手術することなく整復できることがほとんどです。
また、転ぶと骨折することがあるだけでなく、脱臼することもあるので転ばないように生活していただくことも大切と考えています。なお脱臼した場合、強い痛みを伴い、ご自身で脱臼を整復することはできません。病院に連絡し、来ていただいた上で麻酔をかければもう一度手術することなく整復できることがほとんどです。
インプラントの耐用年数
人工股関節は平均的に20年ほどで壊れてしまい、人工股関節再置換術(人工関節の入れ換えの手術)が必要になります。ただし、人工股関節置換術を受けた全ての人が20年で壊れるわけではなく個人差があります。大切なのは手術後に定期的に診察を受けることです。
レントゲンなどの画像を含め定期的に評価することが大事で、人工関節に問題が見つかった場合も早めに見つかれば簡単な対処で済むことが多くなります。
レントゲンなどの画像を含め定期的に評価することが大事で、人工関節に問題が見つかった場合も早めに見つかれば簡単な対処で済むことが多くなります。