ダビンチロボット支援手術システム

ダビンチロボット支援手術システム(da Vinci)-2023年10月より導入いたします-

患者さんへの負担が少ない低侵襲な術式として導入された鏡視下手術の特長を活かしつつ、ロボット機能を付加したことで、従来よりも自在で繊細な鉗子操作と立体的な視野の確保を可能にしたのがダビンチ(da Vinci)です。その優れた技術と操作性は手術を受ける患者さんにとって、とても大きなメリットがあります。
※保険適応となる手術については各診療科へお尋ねください。

ダビンチロボット支援手術システム

術後の痛みが少なく早期の社会復帰が見込めます

  • ダビンチによる手術は、鏡視下手術と同様に患者さんの体に小さな穴を開けて行う傷口が小さい低侵襲の手術です。この術式は出血量を抑え、術後の疼痛を軽減し、機能温存の向上や合併症リスクの回避など、さまざまなメリットがあります。

・術中の出血量が少ない
低侵襲手術のため開放手術と比較すると極めて少ない出血量です。

・傷口が小さい
患者さんの皮膚を切開する傷口は、鉗子を挿入する 8~12mmほどの穴で、最大で6カ所です(術式によって異なります)

・術後の疼痛が少ない
小さな傷口で行われる手術なので、皮膚や筋肉を切開した痛みは少なくなります。

・回復が早い
傷口が小さいため、術後の回復が早く、開放手術よりも1週間以上も入院期間が短縮できます。

・機能の温存が向上
鉗子の操作性がよく、細密な動きによって機能が温存できる可能性が期待できます。

 

ダビンチロボット支援手術システム ダビンチロボット支援手術システム

泌尿器科 適応手術:ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術

前立腺は骨盤底に埋もれていて周囲に血管と神経が豊富な臓器であるうえ、尿禁制にかかわることから、前立腺癌に対する根治術はロボット支援手術の恩恵が高い手術といわれています。米国では2000年にロボット支援手術が始まり 日本でも2009年に前立腺全摘から承認されました。すでに本邦では前立腺癌の約9割がロボット支援下に実施されており(2022年時点)標準術式となっています。

当院でもより高度で良質な医療を提供するため、2023年10月から本手術を導入することになりました。導入に際しては横浜市立大学泌尿器科の全面的な協力を得て、安全かつ確実な手術を行ってまいります。これまで腹腔鏡下前立腺全摘除術を数多く実施してきた経験を活かし、「ダビンチX」の導入によって、これまでと同じ手法で、より精密な手術ができるものと考えています。

大まかな流れ

手術時は頭低位(25°)とし、腹部に6か所ほど1㎝程度の創を置きます。ここからロボット鉗子等を挿入してロボットアームを操作して手術を行います。術者は手術台の隣に設置されたコンソール(手術操作機械)を用いて、3D画像を見ながらロボット鉗子を操作します。膀胱・尿道から前立腺(および精嚢・精管)を離断して摘出し、尿道と膀胱を引き寄せて吸収糸により吻合します。これらの操作で括約筋(尿道を閉める筋肉)や神経をできるだけ温存して手術操作を行います。尿道にはカテーテルを留置、腹部にはドレーンを留置して手術終了となります。4-5時間程度の手術です。リンパ節郭清を行う場合にはさらに1‐2時間程度がかかります。

翌日には多くの方が離床・飲水が可能となり、術後2日目には食事が始まります。約1週間後に尿道カテーテルを抜去し、排尿、尿漏れの状況を確認し、数日で退院となります。

これまでよりも良い点

・繊細な操作が可能となるため、より機能温存(尿禁制、性機能)に優れた手術が可能となります。ただし癌を根治することが主たる目的であるため、癌の病状によっては機能温存よりも根治を優先する場合があります。
・より低侵襲の手術となるため、従来よりも術後の疼痛が軽減し、体調・機能回復が早くなります。

注意が必要な点

・骨盤臓器に対するロボット支援手術では腸管を十分によけるために強い頭低位(25度)がかかります。コントロール不良な緑内障や無破裂脳動脈瘤がある方などは、リスクとなるため本術式は行いません。ただしロボット支援下でも軽度の頭低位(15度)行う代替法が取れる場合もあるため、詳細は主治医にお聞きください。
・ロボットアームは力が大きいため、体を強く圧迫すると圧挫により障害が起きる場合があります。アーム接触防止のため、体位を工夫し。防護用のクッションやカバーを装着して行います。
・ロボットの故障が起きる場合は、本手術が継続困難になる可能性があります。オンラインで不具合を確認して対応しますが、復旧困難な場合は通常の腹腔鏡手術もしくは開腹手術に移行して手術を継続します。

泌尿器科では今後も、腎がん、膀胱がんへのロボット支援手術導入を進めてまいります。
ご不明な点がありましたら、主治医にお聞きください。

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